
父が死にましたので。 僕たちは、家族とは呼べない何かになってしまいました。
- 1 1 この戯曲は幸福な家族の再生の音楽、および演劇のためにある。
- 2 2 その音楽は演劇として創られ、その演劇は音楽として創られる。
- 3 3 その上演は十五楽章の演奏であり、演奏はまたその上演である。
- 4 4 再生は父の死後四十日間の儀式であり、戯曲はその記録である。
- 5 5 その構成員にとって父とは、家族を家族たらしめるものである。
- 6 6 全ての構成員は父を前提とすることで構成員たることができる。
- 7 7 父なき共同体においては、これらは否定されなければならない。
- 8 8 その否定は構成員としての前提における代替策を以て行われる。
- 9 9 すなわち家族の再生は構成員の個としての存在の再生でもある。
- 1010 すなわちこの戯曲は父なき共同体に対するひとつの解答である。
- 1111 幸福とは存在の条件であるが、存在そのものは幸福とは異なる。
- 1212 幸福とは存在の報酬であるが、それゆえまた存在を強迫しうる。
- 1313 幸福とはそのために不幸があり、また不幸のために幸福がある。
- 1414 幸福のために存在があるが、すなわち不幸のために存在がある。
- 1515 幸福という不幸との対話のための十五楽章の戯曲をここに残す。