『リーディング短編集#1』
音楽から書き下ろす短編執筆
屋代秀樹氏「しあわせ学級崩壊」は、生演奏による大音量の音楽の上に、俳優がマイクを用いてセリフを乗せることを特徴とした劇団だ。
普段はEDMを用いることが多いが、現在上演中のリーディング短編集#1では、テンポを落とした静かめの音楽を使用している。さらに、上演の場を劇場やライブハウスから、音響設備にバーが併設されたオルタナティブスペースに移すことで、音楽と演劇の新たな組み合わせを模索している。
リーディング短編集#1のさらなる特徴の一つに、通常の公演で脚本・演出を務める僻みひなたが、脚本執筆をしていないことがあげられる。Aチームでは、太宰治や夢野久作のような近代文学作家の作品を再構成し、Bチームでは、今を活躍している劇作家に音楽からイメージされた短編を提供してもらっている。
Bチームの一作品目である『架空の生活』は「日本のラジオ」代表の屋代秀樹氏が執筆したもので、村山新が演じている。村山はじめ、劇団員では大田彩寧も「日本のラジオ」に出演しており、屋代氏もしあわせ学級崩壊を何度か観劇している。
屋代氏に、リーディング短編集に関わり、そして作品をみて、何を思ったのかを聞いた。

――短編をご提供いただいたわけですが、そのときの印象やご覧になってどう思ったかなどをお教えください。
台本をお渡した際に僻みさんはじめ学級崩壊のメンバーの方々に「曲にピッタリです!」と言われ、「ハハハ、そんなお世辞を」と正直思っていたのですが、観て(聴いて)みたらホントにだいぶピッタリで、非常にありがたい気持ちになりました。ライブで聴いたときの迫真感もたまらないものがありました。喋り出しの声や、セリフとセリフの間といったものは、曲にノせたリーディングでなきゃ味わえない。気持ちよすぎますね。
――今回含め、しあわせ学級崩壊の作品をご覧になってきて、その強みや今後期待することはなんだと思われますか?
自作を演じていただいた村山新さんはじめ、劇団員全員にしあわせ学級崩壊の作品をモノにする魅力を感じました。音とことばと人が調和しつつも、それぞれの個性を失わない、みたいな。
ただ、まったく逆みたいなこと言いますが、俳優がやるという意義や魅力は感じつつも、ラッパーとか歌手とか、音楽プロパーの方が出演したらどうなるのだろうかという期待もあります。
――音楽を先にお渡しして、そこから想像される短編をつくっていただきました。音楽を聴いて、どのようなイメージを持たれましたか?
曲を聴いてまず頭に「生活」ということばが浮かびました。日常のなんでもない繰り返しのようだけど、とても大切なもの、みたいな。曲にハメる、ということは意識しなくていいと伺っていたので、そこはあまり気にしませんでした。ただ、もともとセリフのリフレインが好きなので、そこはうまくやってくれるかなと思って書きました(そしてうまくやっていただきました)。
――今回の作品をつくるときに込めた思いをお聞かせください。
一人芝居書く場合、語りがどういう位相にあるのか、みたいなのをいつも考えちゃうんですけど、今回は村山新さんが演じるということが書く前に決まっていたので、新さんの魅力は引き出しつつも、演者そのものではない、奥行きのあるものを、ということを意識したらこうなりました。モチーフはちょっと前に知り合いから聞いた話を盛り盛りにしました。
『架空の生活』作品あらすじ
わたしが死んでいるのが事実であるということです。正直に言って、これから話すことに、この事実以上のことはなにもありません。わたしがこれから話すことは、わたしが死んでいる以上、すべてが架空のことなのです。